2.本を選ぶ

本選びは大切

本選びは大切

読書感想文を書く上で、本を選ぶというのは実は極めて重要な作業です。
単に指定された課題図書を対象に決めてしまう方法もありますが、課題図書、自由図書、それぞれにメリットとデメリットがあります。
それらを十分に比較検討した上で本を選ぶことが、効率的な読書感想文を書きためのまず最初のポイントです。

基本的に読書感想文が苦手な人は読むのか、書くのか、あるいはその両方が嫌いな人だと思います。
どちらかというと、日頃から(活字の)本を読みつけていない人が多いのではないでしょうか?。
そういう人は実際に本を開いても思うような速さでは読み進まないし、文字は追えても内容が頭の中に入っていかないということがありませんか。
そういう人こそ、本選びが重要です。


本選びにおける評価のウェイト

基本的に、感想文の評価は感想文そのものの出来によって判断されるものですが、評価する側としては、対象となった本に対する先入観がありますから、あまり娯楽性の高い、読みやすさが評判になっている作家の作品よりも文芸作家といわれる人々が書いて、そのときから今まで読み継がれて来た作品の方が良いでしょう。
ケータイ小説などよりも、漱石や太宰の作品を選んだ方が良い評価を得られる可能性が高いと思います。

課題図書と自由図書

課題図書と自由図書

読書感想文の対象となる本は感想文コンクールの主催者が学年別に推奨している課題図書とそれ以外の自由図書に別れます。
課題図書は比較的早めに書店の店頭から見かけなくなってしまいます。
ネットで買うにも夏休み末にあわてて注文しても、その日に手にすることはできません。
図書館に行っても、数に限りがあるため、誰かに借りられている可能性が高いです。
特に夏休みの終わりに近づけばなおさらのことです。

課題図書を選ぶメリット

課題図書を選ぶメリットの1つは話の展開に関するシーンの説明が省略できる点です。
「○○と思いました」と書いた際に、自由図書なら、何故そう感じたかを説明するに、ストーリーやシーンの説明が必要となります。
これに自信があれば良いですが、これが上手く書けないと読み手にわかりにくい感想文となってしまいます。
本当に賞を狙うようでしたら、迷わず課題図書を選んで下さい。
何故なら審査がしやすいし、課題図書としてその本を推薦した側の立場からすると、その課題図書を読んでくれた方が心象が良いからです。

自由図書を選ぶメリット

しかし、このサイトを読んでいる皆さんは、むしろ読書感想文が苦手な人が多いのではないでしょうか?。
できるだけ楽に簡単に、けどそれなりに上手に書きたいと思う人が多いのではないかと思います。
実は私もかつてはそういう少年でした。
そんな私がオススメするのは自由図書だけど有名な本です。
例えば、「坊っちゃん」や「二十四の瞳」、「伊豆の踊子」などです。
あらすじや情報が探しやすいからです。
自由図書にした場合、必ず何故この本を選んだのか?、を必ず書きましょう。
「以前からタイトルだけは知っていて気になっていた」や、「本屋でタイトルや装丁(本のデザイン、外装のこと)を見て自然と手が伸びた」「自分が興味のある分野の本として手にとった」などなど。
「インターネットの読書感想文教室に例文が載っていたから」とは絶対に書いてはいけません。


名作を読むなら

名作を選ぶメリットは?

自由図書を選ぶにしても、世の中の多くの人が知っている、「名作」と言われる文芸作品とそれ以外の本とに別れます。
前者は漱石、太宰、芥川といった書き手による、多くの読み手により長い間支持されてきた作品を指しています。
これらの作品は感想文を評価する先生、特に国語の先生は必ず読んでいるはずです。

【主な作品例】
  • 夏目漱石「坊っちゃん」「こころ」「我が輩は猫である」
  • 芥川龍之介「羅生門」「蜘蛛の糸」ほか
  • 太宰治「走れメロス」「人間失格」「斜陽」
  • 森鴎外「高瀬舟」
  • 宮沢賢治「銀河鉄道の夜」
  • ヘミングウェイ「老人と海」
執筆当時の著者の年齢や環境が分かるので、それを調べて作品にそれらの影響がどう出ているのかを推測し、それを感想文に書く方法もあります。

読むのが苦手ならどうする?

短編を対象にする

本を読むのが苦手で厚い本を読む自信がなかったり、厚い本を読むのが苦痛だという人は、短編小説集から一編を選んでそれを読んで感想文を書く方法があります。
芥川龍之介の作品は短編作品が多く、それぞれが完成度が高く、世間的にも大きな評価をされていますので、感想文を書く本としては十分だと思われます。
具体的には、
  • 「蜘蛛の糸」(小学高学年)
  • 「羅生門」(中学生)
  • 「鼻」(小学高学年以上)
    などが挙げられます。
同様の例では、太宰治「走れメロス」も、小学高学年程度であればOKです。
川端康成の「伊豆の踊り子」も実はかなり短い作品ですので、比較的短時間に読み終えることができるでしょう。
名作以外でも短編小説集は出ていますが、星新一はその読みやすさから、文芸作品としての評価があまり高くありませんので、あまりおすすめできません。

漫画版であらすじを知る

対象が文芸の名作である場合は、先に漫画版を読んで、あらすじを把握方法も可能です。
但し、この漫画版だけで感想文を書くのではなく、引用や内容を書く場合には、原作本を使うようにしなければなりません。
「文芸 まんが」や「(小説の作品タイトル) まんが」で検索してみましょう。
なお、漫画版はほとんどの書店に置いていませんし、もし置いてあっても、漫画のため、立ち読みできないケースが多いようです。

本選びで困ったら

同年代や環境が近い主人公の本を選ぶ

 当然のことですが、主人公と自分の年齢がほぼ同じであったり、同じ趣味嗜好の主人公の作品だと感情移入がしやすく、感想部分の文章を書き出しことが比較的容易です。

 「また、必ず会おう」と誰もが言った。

(中学生以上)
 友達についた嘘から高校生の主人公が旅をしながら家にたどり着く話です。その旅の途中で多くの人と出会い、成長していく過程を描いたものです。結構すらすらと読めてしまいますし、エピソードも多いので、感想文も書きやすいと思います。
主人公・秋月和也は熊本県内の高校に通う17歳。
ひょんなことからついてしまった小さなウソが原因で、単身、ディズニーランドへと行く羽目になる。
ところが、不運が重なったことから最終便の飛行機に乗り遅れてしまう和也。
所持金は3,400円。 「どうやって熊本まで帰ればいいんだ……」。
途方に暮れる彼に「おい! 若者」と声をかけたのは、空港内の土産物売場で働く1人のおばさんだった――。
人生を考え始めた高校生に大人たちが語りかける、あたりまえだけどキラリと光った珠玉の言葉。


本は1冊に絞るべきか?

実際に参考情報を元に入手した本を読んで見たところ、自分が思っていたほど面白くなかったり、感想が思い浮かばなかったりする場合があるかも知れません。
まだ夏休みも残りがあって、まだ修正が可能な場合は本を替えて読むところから再スタートすることも良いかも知れません。
しかし、夏休みも残りわずかのタイミングである場合には、いたずらに本を替えることはせず、その本を読み切ることを薦めます。
一度、本を変更するとまた変更する可能性が高くなり、1冊の本を読了するのに、思わぬ時間を費やしてしまったり、せっかくのやる気が停滞してしまうことにもなりかねません。
極端ですが、「面白くなかった」というのも立派な感想です。
何故、(自分にとって)面白くなかったのかを考えて、それを感想として主張する方法もあります。

本はリズムが大切

実際に書店で本を手にして選ぶ場合には、実際に一部分でも読んでみるのが良いと思います。
もし、文字は読み進んでいくものの、話の内容が頭に入っていかないような場合はその本は避けるべきです。
せっかく読み終わっても、何も頭に残っていなかったり、内容を読み込むにはそれなりの時間とエネルギーを必要とする可能性が高いからです。
このような本は文章のリズムが悪い、あるいはリズムが自分に合っていないことによるものです。文章の読みやすさは平易な言葉を多用することだけではなく、書き手と読み手のリズム感の一致によりもたらされることが多いです。
このことは、実際に感想文を書く場合にも意識することが望ましく、読みやすい文章とするために、リズム感を意識できれば良い文章へと一歩近づくことになります。

エッセイ本の感想文は難しい

エッセイ本(随筆)を対象にするのはやめた方が良いです。
商品として存在する本にを対象として書評というスタイルは成立しますが、児童や生徒に読書感想文として求められているものとは質が異なります。
かなりの上級者でないと難しいです。

実際にエッセイ本の感想文を書くとなると、その感想を説明するために引用などが多くなりすぎて、主張となるべき感想部分とのバランスが悪くなり過ぎて、感想文自体の完成度が悪くなりがちだからです。
やはり小説の類を選びましょう。

伝記を読むのは?

小学生に限り、偉人の伝記を読んで感想を書く方法もあります。
但し、伝記は感想文の広がりという部分で、文章が単調で、誰もが似通ったものになりがちです。
また、実際に書いてみて、文字数が足りなかった時の書き足しが難しかったりもします。

本の読みやすさの点ではかなり読みやすいと思います。